令和6年3定 決算特別委員会(R6.10.23)
民主市民連合 しのだ江里子
「困難な問題を抱える女性支援に関する取組について」
今月17日、国連「女性差別撤廃委員会」では、日本政府によるジェンダー平等への取り組みを8年ぶりに審査し、改善のための勧告を行い、この中では選択的夫婦別姓の導入や個人通報制度を定めた選択議定書の批准についても改めて要請するとの報道があり、日本政府の姿勢が注目される。改めて、このことからも日本においては、女性の人権についての認識がいかに世界の潮流から大きく後れを取っているかがわかる。
本年4月に「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」いわゆる
「困難女性支援法」が施行された。この新法の前身は1956年に売春防止法制定とともに創設された「婦人保護事業」であり、社会の無関心や女性の人権無視の中から66年経って、ようやく制定され、この間、政治を動かしたのは支援現場の切実な声であった。
この女性支援法の意義は、女性に一方的に処分や更生を求め、加害者への刑罰の無い売春防止法から脱し、ようやく女性支援法を必要とする現代社会における女性の困難への支援が求められている。
困難を抱える女性と一言で言っても、その対象はDVや性暴力被害者のみならず、母子や若年女性、高齢者や障がいのある方など幅広く、抱える困難の内容も経済的困窮をはじめ、性的搾取、いじめ、不登校、ひきこもり、予期せぬ妊娠、孤立出産、希死念慮(死にたいと思う)、自傷行為(リストカット)、精神疾患など、自身の健康、仕事や家庭の悩みなど多岐に渡り、複合困難の中にいると言える。
支援が必要なのに、支援のハードルが高い、中には自ら支援を求める資格がない、どうせわかってもらえないなど、自分が悪いと自己責任に陥り内面化してしまう女性も多い。
最近まで行政が取組むことはほぼなく、数少ない民間団体が支援をおこなっていた。会派としても法の施行にあたり、女性の支援に関わる様々な分野の民間団体や関係機関との連携が必要だという認識からこれまでも取り上げ、先の予算特別委員会で改めてこの問題を取り上げたところ、法で定めるところの支援調整会議を立ち上げ、包括的かつ切れ目のない支援体制の構築を目指すと答弁いただいた。
質問 1: そこで質問だが、この支援調整会議について、現在の設置状況などはどうなっているのか伺う。
答弁1:法の施行に伴い、困難な問題を抱える女性への支援を適切かつ円滑に行うため、今年度新たに「札幌市困難な問題を抱える女性支援調整会議」を設置したところです。構成員はDVや性暴力被害者を始め、生活困窮者や若年女性への支援を行っている民間団体を中心に、国・道の関係機関の他、札幌市保健福祉局、子ども未来局の関係課を含めた25団体となっている。
支援調整会議は、支援関係者の連携を深めるとともに、支援の内容や方向性の協議を行うものであり、柔軟かつ機動的に開催できるよう、代表者会議、実務者会議、個別ケース検討会議の3つの段階を設け、9月には第1回代表者会議を開催し、活発な意見交換がなされた。
すでに会議を立ち上げ、代表者会議を開催したとのことだが、法が求める民間団体との「連携・協働」といった視点が何より重要だと認識している。
継続的な支援が必要で、いっとき支援から途切れても戻ってきたら手を離さない、寄り添う支援が必要。今回、多岐にわたる民間支援団体などが構成員に入っていることは理解します。
質問2: 実際にこの会議ではどのようなことを話し合い、また、この会議から具体的にどう困難を抱える女性への支援につなげていこうとお考えなのか伺う。
答弁2:代表者会議では、それぞれの取組を紹介いただいた他、後半は事例検討を行い、それぞれの立場から意見交換を行った。参加者からは「各支援団体が一堂に会し、忌憚のない意見交換や情報共有を行うことができて、有益であった」との声もあり、札幌市としても、このような場を設けることで、各団体をつなぐ役割をしっかりと担うべきと改めて認識した。
今後は、実務者会議を今年度中に数回開催し、個別のテーマを設け、より具体的
専門的な支援について検討を行う予定であり、話し合われた内容は適宜構成員にフィードバックすることで共有し、その後の支援につなげていきたい。
今後は個別のテーマでより具体的・専門的な支援について検討を行うとのことだが、例えば私のところには、悪質ホストクラブ被害者家族からの相談なども寄せられている。悪質ホストクラブでは、SNSを使用して恋愛感情と錯覚させ、女性を支配下に置く手法 (マインドコントロール)がマニュアル化されており、 利用料金の売掛や立て替えによる返済能力を超える借金を背負わせ、その返済のため女性に売春させる事例があり、全国的に問題となっており、国会でも質疑がされている。
ススキノでも10 代の女性、中には制服姿の高校生などもホストやキャストから声掛けをされていると 聞く。このような悪質ホストクラブの問題や、経済的困窮、孤立、不安定な就労状況など、様々な悩みや問題を抱えている女性が存在していると考えられる。
質問3:札幌市としては、こうした困難を抱える女性に対し、今後どのように支援し ていくのか伺う。
答弁3:困難を抱えている女性の課題はますます多様かつ複合化していることが考えられることから、札幌市では今年度中に市内女性に関する実態調査を実施する予定。悪質ホストクラブでの売掛金による被害など、困難を抱えている女性を支援できるよう、専門的かつ幅広い分野で構成している支援調整会議の場を活用して支援につなげていきたいと考えている。
そのためにもまず、関係機関等にも協力をいただき、先の調査結果の共有、対象者の事例や地域資源の把握、相談先の周知などについて努めてまいります。
要望
実態調査をされ、支援調整会議の場を活用して支援につなげていきたいとの答えをいただいた。コロナ禍以降のすすきのを取り巻く状況は大きく変貌しており、はたして安心・安全な札幌すすきのとは言えない事例も増えている。
今回取り上げた「悪質ホストクラブ商法」については、全国的な傾向でもあるが、東京歌舞伎町から始まり、コロナ禍以降、東京・大阪資本のホストクラブやめんずカフェ(コンカフェ)がすすきのにも急増している。
すすきのの大型看板はいつのまにかホストクラブに席巻され、札幌駅前から大通、すすきの、中島公園までの道路には横浜や野田ナンバーの風俗紹介のLED大型アドトラックが独特の音響とともに走行し、札幌市民はもとより観光客からもひんしゅくを買っている。
因みに東京都ではアドトラックが東京都屋外広告条例の適応になり、一定の規制を受けているが、札幌では何の手立てもされていない。
悪質ホストにはまってしまった側に自己責任を求める向きもあるが、成人年齢の引き下げで18歳から自分で契約ができ、責任も伴うことから、売掛や立替により、多額の借金を抱え込み、風俗で働くようになるなど、背後に暴力団やトクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)といわれる犯罪グループの存在も指摘されている。
先日、すすきのを中心に活動する民間2団体が主催する「悪質ホストクラブなどにおける不当な勧誘と被害者救済についての勉強会」が開催された。
この場には市民文化局男女共同参画室はじめ、区政課、子ども未来局子ども企画課、中央区市民部、女性支援団体の方も参加され、中央警察署生活安全課とトクリュウなどの犯罪対応をされている弁護士から、現状や被害予防策、被害を確認した際の対応などを伺うことができた。
中央警察署からは、すすきのには70数店舗のホストクラブがあり、風営法違反で口頭注意を受けたり、暴行あっせんなどで事件化した件数、売掛等の相談のほか、ホストにはまり売掛金を払えない女性をコンパニオンとして働かせ、管理売春させた店舗など検挙事例の紹介があり、こうした場合は 躊躇しないで警察に相談するようにとのことだった。
札幌市では子ども未来局の事業として、若年女性に向けたすすきのでの定期的な夜回りなどの取組も実施していますが、悪質ホストクラブ対策については、さらに札幌市としても、答弁にあった支援調整会議の場を活用し、分野横断的に連携・協働し対策を行っていただきたい。
また、相談先の周知もしていただけるとのこと、警察総合相談#9110をはじめとする相談窓口については、警察事案は北海道管轄ではあるが、すすきのを抱える札幌市として共に、対応していかなければならないと考える。まずは早急に#9110などの相談窓口ステッカーをネットカフェや繁華街のトイレに掲示するなど道警と連携した取り組みも有効だと考える。
是非、今まさに困難を抱える女性への支援のひとつとして、柔軟に支援団体や警察、弁護士会などと充分に連携・協働を計り、一日も早く対応していただくことを求め、次回予算委員会ではこの内容について具体的な支援内容など、お聞かせいただけることを要望して、質問を終わる。